必ず失敗する業務改善2

失敗する業務改善 社内要因

失敗する業務改善 社内要因
前頁では失敗する業務改善のうち、社外要因について取り上げた。
しかし、失敗は社外要因だけでなく社内が原因であることも少なくない。
ここでは社内の失敗要因のうち、多くのプロジェクトで経験する3つの原因について紹介していく。

必ず失敗する業務改善:社内編とその事例

課題=解決策

課題に対して単なる思いつきや直感で決めた解決策を実施すると業務改善は失敗する。

とある企業に新人部長が入社してきた。
新人部長は単なる欠員補充でなく、毎日24時過ぎまでほとんどの社員が残業を余儀なくされる非効率な業務の改善を期待され入社してきた。
この業務への不満から前任の部長は体調を壊し、僅か6ヶ月で退職した。その前の部長も1年しか持たなかった。
大手企業から来たその部長はその分野での経験も豊富で多くの社員が期待していた。

新人部長は着任早々社員数百名全員にヒヤリングを実施し、ほぼ全員の不満、改善すべき業務、提案を聞いた。
多くの社員が思っていることの全てを吐き出し、これで業務が変わると思った。
しかし実際は単なる徒労に終わった。
なぜだろう。
新人部長のもとプロジェクトを組み、数チームで課題の解決に奔走したのに。

失敗の原因は問題や課題の原因を追求・実証せず、社員の改善策を鵜呑みにし、そのまま実行したためであった。
それは、数百にも及ぶ課題や改善策をグルーピングし、それぞれを安易に紐付けてしまった。

結果、表面上の課題に対して間違った解決策を実施し、やることは変わったが業務は更に非効率になっただけであった。
当然、新人部長も数ヶ月で退職して行った。

スコープ定義

スコープ定義
業務改善で最も難しい問題の一つにスコープ(改善範囲)を決める、という問題がある。
問題の多くは突き詰めていくと広い範囲にまたがることが多いのだが、
自部署<<他部署<<自社<<社外と範囲が大きくなるにつれ、業務改善の難易度は上がる。

ある企業で業務改善を実施した際に、社外を業務改善の対象としたことがあった。
内容は単純で、こちらの指定するフォーマットでデータを入力、提供せよ、というだけであった。
しかし、結局失敗に終わった。
業務改善そのものはなんとか失敗しなかったが、社外を巻き込むことはできなかった。
その結果、用意していたインフラ、システム、担当が無駄になった。

社外を巻き込む場合、自社の立場が上であっても(※本来上も下も存在しないが)言うことを聞いてくれないことは多い。
理由は様々だが、相手企業にそこまでの体力がない、あるいは、制約によりデータを提供できないなど固有の事情があるからである。
しかし、自社の立場から、言えば従ってもらえると思い、後回しにしてプロジェクトを進めることが多い。

この失敗を防ぐには事前に誰かを動かし、最も最初に条件交渉を含めて綿密に進めていくことである。
従ってもらえることを前提に計画を進めていくと、後で後悔する結果となる。

実務担当者と調整していない

実務担当者と調整していない
良いプランの業務改善であっても実務担当者の協力がなければ必ず失敗に終わる。
実務担当者の協力は業務の問題点や改善のポイントやコツのヒヤリングに始まり、 改善提案に対する実行可能性の検証など様々である。

このタイプの失敗理由は、実務担当者が最もセンシティブに扱うべきであるにも関わらず、 それをないがしろにしてしまうことにある。
経営者や管理職で業務改善に反対する人はいない。
なぜなら会社が良くなるからだ。
そのため、多少無理があってもほとんど協力してなんとかしようとしてくれる。
しかし、実務担当者は会社がどうなろうが興味のない人の方が多い。
彼らが興味があるのは自分の仕事量であり、変化のない単調な仕事であり、 自分が不要にならないかの心配なのである。

しかし、多くの業務改善担当者は管理職や部門長の承認を得て、物事を進めようとする。
そして実務担当者にはこれで決まった、その通りにやれ、と命令する。
彼らの協力を得られなければ、業務の問題点や改善のポイントやコツを聞き出せないだけでなく、 故意に妨害しようとする。プロジェクトではよく見る光景だ。
彼らの立場、重要性を十分に認識していないと業務改善は失敗する。

社長、管理職は変われない

社長、管理職は変われない
業務改善によって新しい仕組みを作り、運用していたにも関わらず、数カ月後にはなぜか元の業務プロセスに戻っていることがある。
理由は社長や管理職が昔のやり方を踏襲し、業務の流れを変えてしまうからだ。
新しい申請書、新しいプロセス、新しいマニュアルを作ってもベテラン社員の所で業務が止まる。
こんな申請書では駄目だ、なぜ私のところに書類を持ってこないんだ、そんなマニュアルは知らない、という。
それは業務改善のプロジェクト遂行時は応援していた人であってもいざ運用が始まると豹変することがあるほどだ。
その結果、ベテラン社員ほど権限があるため誰も逆らえず、元の業務に戻ってしまう。
中小企業で社長がこれをやるともう誰も手が付けられない。

この失敗を回避するには、その人と業務を完全に切り離す、処罰制度を予め用意・告知する、変革の責任者にして率先させるなど 事前にどのように対応するか必ず準備しておかなければならない。
ベテラン、年配、やる気のない人は本当に変化を嫌う、また残念なことだが人に依っては変化できない、ということを忘れてはならない。


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