業務棚卸とは
業務がどのように流れ、どの業務に何時間かかったか、を記録する。業務効率化、BPR等を実施するときによく使われる手法だ。
業務改善をする場合でも大きな効果が期待できる。
しかし、そのやり方を間違うとほとんど意味がなくなってしまう。
ここでは基本となる業務棚卸の方法について解説していく。
業務棚卸の視点
業務棚卸をする場合、目的に合わせて以下のような項目を集める必要がある。- 業務フロー(全体図)
- 業務名称、内容
- 担当、人数
- 作業量(件、時間など)
- 閑散期人数、ピーク人数
- 着手予定/終了期限、着手日付/終了日付
- 作業総時間
- 頻度(年、四半期、月、週、日、例外)
- 品質、精度
- アイデア、改善要求(上流)、気づき(自工程)
- 制限事項、注意事項など
上記の例も目的が変われば収集するデータが変わってくる。
以下、業務改善における基本的な収集目的である。
項目 | 目的 |
作業量 | 作業量と人数が適当か、単純化できないか、効率化できないかなど |
不だまり | 他の作業が遅れるため作業に着手できない、手持ち無沙汰になるなど |
ピーク | ピークを平準化できないか、ピークを集約できないかなど |
品質 | 品質低下が作業増加や手戻りを発生させてないか |
予定 | 予定通りか、進まないなら何が原因か |
アイデア | 現場が持っているアイデア、不満など |
特に何から手をつけてよいか分からない場合や、全体を捉えてゼロベースで発想するような場合は、
思いつく限りの目的と項目を集めるのも一法である。
しかし、その場合でも最初から細かくし過ぎたり、大きな予算を割いて始めてはいけない。
また、業務棚卸をする場合、上記内容を効率的に集めるため、各従業員にデータ記入をお願いしたり、
最新の勤怠システムを使う場合があるかもしれないが、それらは全く意味がない。
これらの業務は業務改善をする担当者が一つ一つ確認をしながら理解し実感し、パズルを組み立てるように 解決策を考えるべきである。
そのためには全てを知ることと、正確なデータが最も重要になる。
時間管理タイムカードはほとんど意味がない
いくつかの会社では、どの業務に何時かかったかを記録する勤怠システムがある。A業務に3時間、B業務に2時間、C業務に2時間。
全社員を集計すると、A業務に最も多くの時間がかかっている、と把握できる。
あるいは、一人の人が複数のプロジェクトを兼務している場合、
プロジェクトごとの採算を測ろうと、
Aプロジェクトに2時間、Bプロジェクトに3時間と記録する。
しかし、待ってほしい。
このデータを使って何かの取り組みに生かされたことがあるだろうか。
実情はほとんどが失敗に終わる。
なぜだろう。
人事部が作る分類以外のものが常にでてくる
人事部が作成したタイミングで作った分類は利用時にはすでに形骸化している。ひどい場合には、人事部がヒヤリングすらしない為、意味の分からない分類で埋め尽くされ、
几帳面につけようと努力する社員でさえ呆れて、適当な分類で時間をつけ始める。
また、新たに分類を追加する場合でも、個人では追加できない(当然だが、全員が情報を共有しないと意味がない)ため、 追加と周知の速度が業務に追いつかず形骸化してしまう。
全員が緊張感を持ってできない
このデータは正確でないと意味がない。しかし、自分の業務ではないため、それほど真剣にやってくれる社員は少ない。
集計すると、誤ったデータが出来あがる。
上司は部下が可愛い、自分の評価も上げたい
プロジェクトの採算性を図る場合も同じである。Aプロジェクトが黒字でBプロジェクトが赤字の場合、 上司は多くの時間をAプロジェクトにかけ、Bプロジェクトにはほとんど手間がかかってないように装う。
当然である。
それなら、単純に月の労働時間の半分=80時間を計上するほうがはるかにましである。
徹底的に業務を理解して、少しずつデータを収集すること
何をしたいか目的を明確にし、その為の正確なデータを把握することだ。経費の場合、お金が絡むため、1円の間違いも許されないが、
作業内容記録や時間はミスしても何もない。
しかし、業務分析に必要なのは正確なデータだ。
だから、誰か信頼できる人に業務内容やその時間を測ってもらう。
人数は多い方が効率的で良いが、人数よりも信頼性が大事である。
データを取得する目的や活用方法を明確にし、几帳面で真面目な人に協力してもらうのがよい。
常にコミュニケーションを取りながら、計測し、修正してくことで正確なデータを計測することができる。
そこが業務改善や業務改善の出発点となり、不思議であるが、データが集まり終わるころには、 あなたの頭の中に解決策が描かれているはずである。
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