問題定義をせず業務改善を始めてはならない

真の問題を発見してから業務改善を始める

問題定義をせず業務改善を始めてはならない
問題定義をせず業務改善を始める場合がある。
それは表面的な事象のみを捉えた問題定義を含む。
真の問題は何かを正しく定義しないと業務改善による効果は低下するだけでなく、 場合によっては現状よりもひどい結果をもたらす。
では、問題定義とは何か、真の問題に迫るにはどうすれば良いのか。
ここではいくつかの事例を取り上げながら、問題定義の大切さと問題定義の方法について解説していく。

見える事象にだまされない。問題とは氷山の一角

問題とは氷山の一角
問題には表面化している問題・課題と真の課題がある。
そして、業務改善の成功はこの真の課題を発見できるかどうかに依存する。
いくつかの例を挙げながら、表層上の課題から真の課題にたどり着く方法を紹介していく。

経理部の失敗

冒頭の例で紹介した経理部の決算早期化。
問題を正しく把握せず、人員増加という解決策が見事失敗に終わった。
この問題の本質はどこにあったのだろう。
実はこの会社は法人数8つのグループ会社であった。
本来管理会計のみで把握すれば良い業績管理を社長という地位につかせることにより責任感、使命感を持って欲しいと 制度会計でも導入していた。その結果、社員数が数百名しかいないにも関わらず法人数が8つというありえない数になっていた。
また、グループ全体で共有すべきリソースも法人が異なるため共有化されず、業務の効率化とは程遠い状況を作っていた。
この真の問題は法人数であることは明確であったが、決算が遅いとう理由から単純に人員増加という解決策に頼った結果、見事失敗に終わったのである。

運用コスト削減の失敗

ある大手通信会社において、システム運用コスト数億円は明らかに異常だった。
また、この運用コストが収益を圧迫し、本業で得た利益をシステム会社の運用コストが全て持っていくという体質が作られつつあった。
そこで始めたのが運用コストの圧縮。
それまでの150人体制を見直し、100人体制にした。
結果は残業代が増加して運用コストがさらに増加しただけでなく、社員が疲弊した結果リタイア組が続出し、 内部にナレッジが貯まらない素人集団へと成り下がり、正しく運用できず障害が多発し、さらにコストが増加した。
この例では運用コストを下げるため、社員を減らすという解決策は正解なのだが、そもそもなぜそれだけの人数が必要だったのか、 が吟味されていなかった。 後日、業務分析を行った結果、上流工程の品質不良のしわ寄せが全て運用業務に行っていたことがわかった。
正しく調査すれば、本来すべきは上流工程の品質改善であることは明白であった。

結果にはシンプルで納得できる原因がある

結果には原因がある。
業務改善を行うには、この「真の問題・原因」を正しく見極めることだ。
それはほとんどの場合、そのやり方なら当然の結果であると理解・納得できる原因であり、非常にシンプルである。
中には問題が複雑に絡み合うこともあるが、一つ一つ順番に紐解いて行けば良い。
そして、業務改善における真の問題を発見するには2つの方法がある。

仮説思考

もしかしたらこれが原因ではないか、と決め付け、その仮説が正しいかを検証し真の問題を定義していく方法である。
経営の大局を見る眼が必要となるため、広い経営知識があることが望ましい。
仮説は初期の分析を元に思いつくこともあれば、ある重要な人へのインタビューで発した一言がきっかけとなる場合もある。 こうなるのは当然だ、という誰でも納得できる論理的理由にたどり着くのが望ましい。

帰納法

これは単純に疑問を複数の切り口から繰り返すだけで良い。
なぜと。
もう少し詳しく言うと、なぜこんなことをしているのか、なぜ他の人にやらせないのか、なぜ品質が悪いのか、なぜ・・・
仮説思考と比較すると時間がかかるが、不慣れな場合や問題が分かりづらい場合には分析の方が簡単である。
ただし、枝葉末節に囚われ過ぎて、経営の大局を見失うという罠に陥りやすい。


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